【論文要約】外来患者に最適なストレッチ時間とは?主観的伸張感を基にした効果的な方法を徹底解説!

目的

ストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、可動域を改善するために広く用いられていますが、ストレッチの持続時間やセット数がどのくらいが最適なのかは、依然として議論の対象です。特に外来患者に対して、効果的なストレッチ方法を提供するためには、科学的な裏付けが重要です。

この研究は、船橋整形外科市川クリニックの理学療法士である清野浩希氏を中心とする研究チームによって行われました。彼らの目的は、外来患者を対象に、主観的な伸張感(ストレッチによって感じる「伸びた」と感じる感覚)を基にストレッチの実施時間を設定し、その効果を検証することでした。外来患者にとって最適なストレッチのセット数と時間を明らかにするため、実際の患者を対象にした臨床研究を行いました。


方法

研究の対象となったのは、2020年4月から2021年3月にかけて船橋整形外科市川クリニックを受診した外来患者24名(男性7名、女性17名、平均年齢64.5歳)です。これらの患者は、脊柱疾患や下肢疾患を持ち、クリニックの理学療法士によりハムストリングスの柔軟性が低下していると診断されました。

ストレッチの方法としては、患者が端座位(椅子に座って両足を伸ばす姿勢)で行うハムストリングスのストレッチが採用されました。患者は腰椎の代償動作を避けるために骨盤を前傾させ、股関節の屈曲を利用してハムストリングスを伸ばしました。ストレッチ強度は、患者が痛みを感じない範囲で最大限の「伸張感」を感じるまでとし、1セットの時間は患者が主観的に「伸びた」と感じるまでの時間で決定しました。合計4セットのストレッチを行い、各セットの間に60秒の休息を設けました。

効果の評価として、股関節と膝関節を90度に屈曲させた状態での膝関節他動伸展角度(KEA)をデジタル水平角度計を用いて測定し、ストレッチ前後での角度の変化を比較しました。また、ストレッチの合計時間とKEAの変化量の関係も解析しました。


結果

清野浩希氏らの研究チームによると、外来患者に対するストレッチの効果は、1セット目から有意に現れ、2セット後には最大の効果が確認されました。具体的には、ストレッチ前のKEA(膝関節他動伸展角度)が58.0°だったのに対し、1セット後には63.4°、2セット後には65.7°に改善しました。しかし、3セット目と4セット目では、2セット目以降と大きな差は見られず、効果が頭打ちになったことが示されました。

つまり、ストレッチを3セット以上行うことで得られる効果は限定的であり、最も効果的なのは2セットであるという結果が得られました。また、ストレッチの合計時間とKEAの変化量には有意な相関関係が見られなかったため、時間よりもセット数が効果を決定づける要因であることが示唆されました。


考察

清野浩希氏の研究チームによって行われたこの研究は、外来患者に対して2セットの静的ストレッチが最も効果的であることを示しています。1セットでも柔軟性の改善は見られますが、2セット目で最大の効果が得られ、それ以降は効果が頭打ちになるため、無理にストレッチの回数を増やす必要はないことがわかりました。

また、ストレッチの持続時間に関しては、各セットで主観的な「伸張感」を基にした時間設定が有効であり、ストレッチを長く続けることが必ずしも効果を高めるわけではないことが確認されました。このことから、患者一人ひとりの体の状態に合わせたストレッチ方法を選択することが重要であると結論づけられます。


まとめ

清野浩希氏を中心とした船橋整形外科市川クリニックの研究チームによる研究で、外来患者に対して最も効果的なストレッチ方法として、2セットの静的ストレッチが最適であることが示されました。主観的な伸張感を基にした実施時間の設定により、柔軟性を最大限に向上させることができます。また、3セット以上のストレッチは追加の効果をもたらさないため、時間を無駄にせずに効率的なストレッチを行うことができることも確認されました。

ストレッチを指導する際には、患者の体の状態に合わせて適切なセット数を設定し、無理なく効果を引き出すことが重要です。特に外来患者にとっては、短時間で効果的なストレッチ方法を取り入れることで、日常生活の質を向上させることが期待されます。


ブログ記事の論文

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jofmpt/2/Supplement/2_P-94/_pdf/-char/ja

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はりきゅう整体院 和からだみなおし処 矢上真吾