かゆみと痛みのちがいを知って、
かゆみと上手につきあう

かゆみと痛みについて説明するイメージ

「かゆい」のつらさは、なかなか理解されにくいもの。

でも、痛みとの違いを知ることで、対処の選択肢が広がります。

かゆみの仕組みと、今日からできるセルフケア、鍼灸・整体でのサポートをやさしく解説します。

1. 「かゆみ」って何?
―痛みとどう違うの?

かゆみと痛みの違いを示すイラスト

同じ「つらい」でも、かゆみと痛みはからだでの役割がまったく違います

この違いを知ることが、かゆみ対策の第一歩です。

🚨痛み
危険を知らせる警報

トゲ・熱・ひねりなど強い刺激をキャッチして「危ないよ!」と脳へ伝えます。

目的は動きを止めて守ること。

🦟かゆみ
注意を向けるサイン

乾燥・汗・アレルギーなどで専用の神経が反応。

目的は異物を落とす・注意を向けること。ただし掻きすぎは逆効果。

💡 たとえるなら

痛みは「車の急ブレーキ」
―しっかり止めて守る。

かゆみは「フロントガラスの小さな虫」
―気になってワイパーを動かしたくなるけど、やりすぎるとガラスにキズ=皮膚が荒れてしまいます。

2. なぜ「掻く」と悪化するの?
―痛みとかゆみの不思議な関係

掻くことで悪化するメカニズム

「掻くと気持ちいい」のには理由があります。

実は、痛い刺激はかゆみを一時的に弱める性質があるのです(冷やす・軽くつねるなど)。

これは神経の通り道で、痛みの信号がかゆみの信号を邪魔するから。

でも、強く掻いて傷つけるのは逆効果

皮膚のバリアが壊れて、かゆみが長引いてしまいます。

大切なポイント

掻くと一瞬楽になるのは「痛みでかゆみを上書き」しているだけ。

皮膚を傷つけると、かゆみはどんどん悪化します。

「掻く代わりの方法」を見つけることが、かゆみ改善の鍵です。

では、そもそも「かゆみ」は何を教えてくれているのでしょうか?

3. かゆみは身体からの
「大切なサイン」

身体からのサインとしてのかゆみ

東洋医学の知恵:「未病を治す」

東洋医学には「未病を治す」という考え方があります。

これは「病気になる前の段階で、身体の変化に気づいて整える」という予防医学の考え方です。

そして興味深いことに、「身体は生命に関わらない部分から、異常を知らせる」という知恵も伝えられています。

なぜ「生命に関わらない部分」から?

心臓、肺、肝臓など重要な臓器を守るために、まず皮膚、髪、爪など、生命維持に直接影響しない部分に症状が出る。

これは身体の防御反応であり、同時に「このままだと大変なことになるよ」という警告サインなのです。

現代医学でも説明できる部分

この東洋医学の考え方は、現代医学でも部分的に説明できます。

慢性的なストレスや疲労があると、身体は生命維持に必要な機能を優先します。

その結果、皮膚の修復や髪の成長など「非緊急」の機能は後回しになり、バリア機能の低下や炎症反応として現れます。

  • 円形脱毛症:ストレスが引き金となる自己免疫反応
  • 皮膚のかゆみ:疲労→自律神経の乱れ→皮膚バリア機能低下
  • 肌荒れ・湿疹:免疫バランスの崩れの表れ

かゆみは「見直しどき」のサイン

つまり、かゆみは身体が「このままでは大切な部分に影響が出ますよ」と教えてくれているのです。

「たかがかゆみ」と我慢せず、このサインを受け取って、生活を見直すチャンス。

実例:疲労とかゆみの関係

「トレーニング量が増えたら急にかゆくなった」
「仕事が忙しい時期だけかゆい」

このような経験はありませんか?

実は、疲労が溜まるとかゆみが出やすくなる方は少なくありません。疲れると自律神経が乱れ、皮膚のバリア機能が低下したり、免疫バランスが崩れて炎症反応が出やすくなります。

しっかり休息をとると治まる場合は、からだが「休んで」とサインを送っている状態です。

当院では、「未病を治す」という東洋医学の考え方を大切にしながら、かゆみという小さなサインの段階で、からだ全体を"みなおす"お手伝いをしています。

🌱 早めのケアが、未来のあなたを守る

大きな不調になる前に、小さなサインで気づける。

これは身体があなたに与えてくれた、とても優しいシステムです。

かゆみを「面倒なもの」ではなく、「身体との対話のきっかけ」として捉えてみませんか?

4. 今日からできる
「かゆみ」セルフケア

かゆみセルフケアの方法

基本の4つ

  1. 保湿が最優先:
    入浴後1分以内に保湿剤を。
    汗・乾燥対策、チクチクする生地や洗剤の見直しも大切です。
  2. 短時間の冷却:
    保冷材をタオル越しに当てる。
    長時間は避けて、10〜15分程度に。
  3. 掻く代わりに「押す」:
    爪で引っかかず、指の腹で軽く押さえる。
    これだけでも楽になる方が多いです。
  4. パターンを見つける:
    食事・汗・寝具・天候など「かゆくなった前後」をメモ。
    自分のかゆみの癖が見えてきます。
⚠️ こんな時はすぐ受診

発熱・広範囲の腫れや化膿、原因不明で数週間続くかゆみ、
夜間に目が覚めるほどのかゆみ、発疹の急激な拡大など。

5. 今日からのチェックリスト
(かゆみケア)

6. 鍼灸・整体では
「かゆみ」に何をしているの?

和からだみなおし処の施術風景

当院では、かゆみに対して次のような働きかけでサポートしています。

  • 「掻く」の代わりの安全な刺激:
    軽い鍼や手技、短時間の冷却で、掻き壊しを避けながらかゆみの感覚を和らげます。
    痛みでかゆみを一時的に抑える原理を応用しますが、皮膚を傷つけません。
  • 神経の通り道を調整:
    やさしい触覚刺激が、かゆみの信号が通る道を一時的に狭めます(雑音カットのイメージ)。
  • 自律神経の調整:
    呼吸が深くなり、筋肉のこわばりがゆるむことで、かゆみの感じやすさが下がる方も。
    ストレスとかゆみは密接に関係しています。
  • 睡眠の質を支える:
    「夜かゆくて眠れない」悪循環を断つため、からだ全体の緊張をゆるめます。
  • 掻く行動のパターンを見直す:
    無意識に掻いてしまう動きのクセを、からだの感覚から見直していきます。

※医師の治療を置き換えるものではありません。
必要に応じて医療機関の受診と併用することで、より良い結果につながります。

7. 状態別の考え方
(当院で多いご相談)

アトピー・乾燥肌に伴うかゆみ

最優先はスキンケア(保湿・刺激回避)と皮膚科の治療です。

当院では、それらと併用しながら「掻く代わりの安全な刺激」「ストレス・睡眠の質の支援」「肩首のこわばり緩和」で、かゆみの感じやすさを下げる土台づくりをお手伝いします。

季節・環境によるかゆみ

乾燥する冬、汗をかく夏、花粉の季節など、環境変化で敏感になるかゆみには、自律神経の調整とスキンケアの見直しが効果的です。

からだ全体の緊張をゆるめることで、かゆみの閾値を上げていきます。

透析中や内科疾患に伴うかゆみ

主治医の治療を継続しながら、寝つき・掻き壊し・日中のイライラを減らすことを目標に、短時間・低刺激でサポートします。

内科的な治療と並行してご利用いただけます。

ストレス・イライラとかゆみ

「忙しいとかゆくなる」「イライラすると掻いてしまう」という方も多くいらっしゃいます。

自律神経を整えることで、かゆみとストレスの悪循環をほどいていきます。

8. よくある質問

Q. どれくらいで良くなりますか?
個人差がありますが、まず3か月を目安にお考えください。

かゆみは生活習慣やストレスとも深く関わっているため、からだの変化には時間がかかります。

焦らず、からだと対話するように進めましょう。
Q. 鍼は痛くない?衛生面は?
当院は使い捨てディスポ鍼を使用し、刺激量は最小限から調整します。

かゆみに対しては特に優しい刺激を心がけています。

髪の毛ほどの細さで、多くの方が「思ったより全然痛くない」とおっしゃいます。
Q. 皮膚科と併用できますか?
はい、併用をおすすめします。

皮膚科での治療は継続していただき、当院では「掻く行動のケア」「睡眠・ストレスの改善」など、生活全体からのサポートをいたします。
Q. 病院に行った方がよいサインは?
高熱、広範囲の化膿、原因不明の急激な悪化、夜間に目が覚めるほどの激しいかゆみ、発疹の急速な拡大などは医療機関を優先してください。

迷ったらまず受診を。
💙 和からだみなおし処より

かゆみは、からだからの大切なメッセージです。

無理に抑え込もうとせず、「なぜ今、かゆいのか」に耳を傾けてみてください。

からだの声を聴きながら、あなたに合った"みなおし"を一緒に見つけていきましょう。