アルコールと健康の真実|「百薬の長」をエビデンスから考える|館山市の鍼灸院

「百薬の長」と「万病のもと」を
エビデンスから考える

「酒は百薬の長、されど万病のもと」ということわざがあります。

お酒は、人と話すきっかけになったり、食事が楽しくなったり、気持ちがほぐれたり…
「これが楽しみなんだよなぁ」と思える瞬間が確かにあります。

私自身、お酒が好きなので、その気持ちはとてもよく分かります。

しかし一方で、医療従事者としてエビデンスを学んでいくほど、
「アルコールには良い面より"悪い面のほうが多い"」
という事実も見えてきます。

この記事は、お酒を否定するのではなく、
"自分で納得して、健康と楽しみのバランスを取れるようにする"ための情報をまとめたものです。

1. アルコールとは何か?
体の中で何が起きているのか

アルコール(エタノール)は胃と小腸で吸収された後、肝臓で分解されます。

体内での分解プロセス

1) エタノール → アセトアルデヒド(強い毒性)
2) アセトアルデヒド → 酢酸 → 水と二酸化炭素へ

このアセトアルデヒドが二日酔い、顔が赤くなる、動悸、頭痛などを引き起こす物質で、発がん性が確認されていることも重要なポイントです。

さらに日本人はアセトアルデヒドを分解する酵素(ALDH2)の活性が弱い人が多いため、遺伝的にアルコールの影響を受けやすい民族でもあります。

2. 「どれくらい飲むと危険なの?」
純アルコール量で考える

日本の基準では純アルコール20g ≒ だいたい「1日分のリスク量」とされています。

純アルコール20gの目安

ビール中瓶 1本(500ml):約20g
日本酒 1合:20g
ワイン グラス2杯:20g
焼酎(25%)コップ半分:20g

重要「20gで安全」という意味ではありません

近年のエビデンスでは、20gでもがん・高血圧などのリスクは有意に増えると報告されています。

「少しなら健康にいい」という説は、過去の解析の偏りがあったことが指摘され、現在は"健康のために飲むメリットはほとんどない"という流れに変わっています。

3. アルコールの"良い面"と言われてきたもの

昔から言われる、いわゆるポジティブな効果:

  • ほどよくリラックスできる
  • コミュニケーションが円滑になる
  • ストレス発散になる
  • 赤ワインは体に良い?などの話

ただし、最近の大規模研究では…

エビデンスの変化

• 赤ワインの健康効果は"ほぼプラセボ級"
• 少量飲酒の心疾患予防効果はバイアス(不健康な非飲酒者を比較群に含んでいた)
• 「飲酒のメリット > リスク」ではない

つまり、「楽しみとしての飲酒」は残るが、「健康のために飲む理由」は消えつつあると言えます。

4. アルコールの健康リスク(エビデンス)

① がんリスク(最重要)

アルコールは少量からでも複数のがんのリスクを上げることが確立しています。

  • 食道がん
  • 大腸がん
  • 乳がん
  • 口腔・咽頭がん
  • 肝臓がん など

注目少量でもリスク上昇

特に乳がん・大腸がんは、1杯程度(純アルコール10g前後)でも有意にリスクが上がるというデータがあります。

② 心血管系・高血圧

昔は「少量なら心臓に良い」とされましたが、最近の研究ではほとんど利益は見いだされていません

むしろ以下のリスクが報告されています:

  • 血圧上昇
  • 脂質異常
  • 不整脈
  • 脳出血リスク増加

③ 肝臓・膵臓

  • 脂肪肝
  • アルコール性肝炎
  • 肝硬変
  • 肝がん
  • 急性膵炎

肝臓のダメージは「痛くない」ため気付きにくく、沈黙の臓器と言われるゆえんです。

④ 脳・認知症

アルコールは神経毒であり、以下のリスクがあります:

  • 脳萎縮
  • 記憶力の低下
  • 認知症リスク上昇

少量から直線的に増加するという研究もあります。

⑤ メンタル・睡眠

  • 不安の増強
  • 抑うつ傾向
  • 睡眠の質が下がる(途中覚醒・浅い眠り)
  • 翌日のだるさ・集中力低下

「寝酒」は眠れるようでいて、実は逆効果です。

5. アルコールの一番の怖さ:依存性

アルコールの最大の特徴は依存性です。

  • 量が徐々に増える
  • 耐性がついて酔わなくなる
  • 自分でコントロールできなくなる

これが「意志の問題」ではなく、脳の問題であることが医学的に確認されています。

チェック項目

  • 飲む量が増えてきた
  • 1人で飲むことが増えた
  • 休肝日が作れない
  • 飲まないと落ち着かない
  • 朝から飲みたいことがある

ひとつでも当てはまれば、注意が必要です。

6. 和からだみなおし処としての考え方
「やめろ」ではなく「どう付き合うか」を一緒に考える

私自身、お酒が好きです。楽しさも難しさもよく分かっています。

だからこそ、「飲むなら、このくらいにしておこう」という"判断材料"を提供することが、医療従事者としての役割だと思っています。

すぐにできる「飲み方の工夫」

  • 週2日は休肝日をつくる
  • 家に"飲みすぎる量"を置かない
  • 食事と一緒に飲む(空腹はNG)
  • 何杯飲むか先に決める
  • ストレス発散を「酒以外」にも1つ作る

お酒を完全にやめるのが難しい人でも、"量を減らす"だけで健康リスクは確実に下がります

7. まとめ
体と人生のバランスを、自分で選べるように

  • アルコールの健康リスクは「少量から」存在する
  • 特にがんと認知症の研究は強いエビデンス
  • 一方で、お酒には楽しみ・文化としての側面もある

大切なのは

「飲まないメリット」と「飲む楽しさ」を知ったうえで、自分で量を選ぶこと

和からだみなおし処では、飲酒に関する体の変化・睡眠・疲労なども含め、総合的に健康の相談を受け付けています。