私が治療家を志すようになったきっかけは、父の存在でした。
私が小学生の頃、サラリーマンとして働いていた父は、慢性的な腰痛に悩まされていました。
学生時代にボクシングをしていた父は、元気な時には私と兄にミット打ちなどをしてくれる強い父という印象でした。
しかし、腰痛が悪化するにつれて、そのような時間も減り、次第に仕事を休むことが増え、家で寝込む日々が続くように。
幼いながらに、家族の将来に対する漠然とした不安を感じていたことを覚えています。
そんな中、母が新聞の広告欄で見つけた整体法に父を連れて行ったことが、私たち家族にとって転機となりました。
その整体法は父の症状に劇的な効果をもたらし、「100回通えば治る」と言われた通り、実際に通い続けた結果、父の腰痛は改善されました。
この出来事に父は深く感銘を受け、「この技術を身につけて、今度は自分が人々を救いたい」と勉強会に通い始め、数か月後には自宅の居間で整体院を開業しました。
その施術は評判を呼び、すぐに患者さんが増え、マンションを借りて正式に開業するまでになりました。
その翌年には「もっときちんとした知識と技術が必要だ」と感じた父は、鍼灸の専門学校に通い、国家資格を取得しました。
父が鍼灸の専門学校に入学した翌年、姉が同じ学校に進学しました。
さらに3年後には兄が、そして6年後には私自身も同じく鍼灸の道へ進み、家族4人が鍼灸師となりました。
現在、父は治療家を引退し、姉は埼玉の実家の隣で開業、兄は横浜で、私は館山でそれぞれ開業しています。
私たちは、父の意志をそれぞれの地で受け継ぎ、日々患者様と向き合っています。