紙タバコと電子タバコの
健康リスクは違う?
― 血流・痛み・周囲への影響を科学的根拠から解説 ―
はじめに
患者さんから
「紙タバコと電子タバコ、どっちが身体に悪いの?」
「電子なら安全なのでは?」
というご質問をいただくことが増えています。
これが現在の医学的見解です。
特に、血流・血管機能・痛みに関わる身体反応においては、紙タバコ・電子タバコどちらの場合でも、悪影響を示唆するデータが報告されています。
当院は「巡り(血流)」を重視する施術院として、科学的根拠に基づき、タバコと身体の関係を整理します。
1. 紙タバコの健康リスク
(裏付けデータあり)
■ 1-1 燃焼により多種の有害物質を発生
紙タバコは約600〜900℃で燃焼し、7,000種以上の化学物質が発生します。
そのうち70種以上が発がん性物質と報告されています。
■ 1-2 血管・血流への影響
喫煙により以下の作用が起こりやすくなることが報告されています:
- 血管内皮機能の低下
→血管の柔軟性が失われ、末梢血流が阻害される - 一酸化炭素の影響でヘモグロビンが酸素を運べなくなる
→筋肉・関節が"酸欠状態"になりやすい
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat/31/3/31_RV22015/_html
■ 1-3 痛みの悪化と関係
慢性腰痛・頸部痛と喫煙の関連性を示す研究は多く、あるメタ分析では喫煙者は腰痛の有病率が高い傾向が示されています。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6768701/
椎間板の血流低下 → 栄養不足 → 構造の弱化
が起こる可能性が指摘されており、
これが痛みの慢性化に関与する可能性があります。
2. 電子タバコ(VAPE)の
健康リスク
電子タバコは紙タバコより"有害物質の種類が少ない可能性"はありますが、決して安全ではないとWHO・厚労省は明確に発表しています。
■ 2-1 血流・血管への影響
電子タバコの蒸気でも以下の影響が報告されています:
- 使用直後に末梢血管の血流低下が確認された研究あり
- ニコチンによる交感神経刺激 → 血管収縮
https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2019/july/brief-exposure-to-vaping-damages-blood-vessel-function-study-finds
血流障害を起こす可能性を示唆します
■ 2-2 呼吸器への影響
- プロピレングリコール等の溶剤が気道を刺激
- 加熱条件によってはホルムアルデヒドなどの有害物質が生成
■ 2-3 慢性痛との関連
電子タバコ使用者でも慢性痛・頭痛・顔面痛の増加が報告されており、喫煙と同様のメカニズム(血流低下)が関与すると考えられています。
3. 周囲(家族・子ども)への影響
■ 3-1 紙タバコ:受動喫煙の害は明確
- 有害化学物質 4,000種以上が室内に拡散
- 子どもの喘息・中耳炎・低体重・突然死症候群のリスク上昇
さらに、衣服・壁・車に付着して残る「三次喫煙」(third-hand smoking)も問題で、喫煙後数時間〜数日残留することがわかっています。
■ 3-2 電子タバコ:受動吸入は"少ないが存在する"
- 吐き出された蒸気にニコチン・粒子状物質・香料成分が含まれる
- 小児・妊婦・呼吸器疾患患者では害の可能性が指摘
周囲が全く影響を受けないわけではありません。
4. 鍼灸・整体の視点で
最も重要なポイント
■ 4-1 タバコの影響=「血流の障害」
紙・電子にかかわらず、ニコチンは強力な血管収縮作用を持ちます。
これにより、
- 筋肉の硬さ
- 冷え
- だるさ
- 回復の遅れ
- ぎっくり腰・寝違えが治りにくい
など、当院が扱う症状全般に悪影響が出る可能性があります。
■ 4-2 施術効果が出にくくなる可能性
鍼灸・整体は「血流の改善」が根幹ですが、喫煙により施術効果が相殺される可能性があります。
特に施術後30〜60分の喫煙は血管収縮が強く起きやすいと報告されています。
まとめ
紙タバコ・電子タバコともに、血流・血管への悪影響を示す研究は多数存在しており、痛みの慢性化や回復の遅延につながる可能性があります。
また、周囲への健康リスクも "ゼロではない" ため、ご自身の健康だけでなく「ご家族の健康を守る」という観点でもタバコとの距離を考えることは非常に重要です。
当院では、禁煙・減煙は"努力"ではなく「身体の巡りを良くし、治りを早める習慣」として患者さんと一緒に取り組んでいます。