1. はじめに
「腰が痛い…」とつぶやく大人を見たことがありますか? 日本人の10人に8人は一生に一度は腰痛を経験するといわれています。授業や部活で長時間イスに座ったり、スマホをのぞき込む姿勢でも腰はこりますよね。
ではどうすれば腰痛を防ぎ、ひどくならないようにできるのか?――そのヒントが「腰痛診療ガイドライン」という本にまとめられています。むずかしそうな名前ですが、ポイントをつかめば中学生でも十分理解できます。この記事では専門用語をかみくだきながら、最新ガイドラインの大事なところをやさしい言葉で紹介していきます。
2. 腰痛ガイドラインってなに?
- ガイドライン=公式の道しるべ
- 医師や治療家が「どの検査や治療が安全で効果的か」判断するときのルールブック
- 2019年に日本整形外科と日本腰痛学会が改訂版を発行し、2023年には世界保健機関(WHO)が国際版を公開
ポイントは「むやみにレントゲンを撮ったり大量の薬を出す前に、運動や生活習慣を見直そう」という考え方です。
3. 腰痛のタイプを知ろう
発症期間 | 呼び名 | 目安 |
---|---|---|
4週未満 | 急性 | ぎっくり腰など |
4週~3か月 | 亜急性 | 痛みが長引きはじめた状態 |
3か月以上 | 慢性 | 習慣化して生活にしみつく |
さらに
- 特異的腰痛:骨折や腫瘍などはっきりした原因がある
- 非特異的腰痛:原因がひとつにしぼれない(全体の約85%)
多くの人は非特異的ですが、あわてず対策をすればよくなります。
4. まずチェック! 危険サイン「レッドフラッグ」
次のような症状があるときは、すぐ病院で検査を受けましょう。
- 20歳未満または55歳以上で急に強い痛み
- じっとしていても夜中にズキズキ
- 胸まで痛む
- がんや骨粗しょう症などの病歴がある
- 38℃以上の熱が続く
- 足がしびれて力が入らない
- 急にやせてきた
- 背骨の形が大きく変わった
これらは内臓の病気や骨の感染症など重い病気のサインかもしれません。
5. 診断で大切なこと
- レントゲンやMRIは必要なときだけ
- レッドフラッグがなければ、いきなり画像検査をしてもメリットは少なめ
- 医師の問診と触診がいちばんの基本
- 痛み=ケガとは限らない。体が過敏になっているだけのことも多い
6. 治療方針 ― 3つの柱
ガイドラインは「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル(BPS)」で考えよう、と言います。かんたんに言うと
要素 | 例 |
---|---|
バイオ(体) | 筋肉や関節の炎症 |
サイコ(心) | 不安やストレス |
ソーシャル(社会) | 学校・家庭・友だち関係 |
体だけでなく心や環境も一緒にケアしようという考え方です。
7. やってみよう! 非薬物療法
7-1 患者教育
- 動いたほうが治りやすいことを知る
- 「痛い=壊れている」わけではないと学ぶ
- 家でもできるストレッチやウォーキングのメニューを作る
7-2 運動療法
- ウォーキング、筋トレ、水泳、ヨガなど好きな運動を続ける
- 週150分(1日20~30分)を目標
- 姿勢チェック:スマホ首やゲーム猫背に注意
7-3 徒手療法・マッサージ
- 急性腰痛の痛みを短くする助けに
- 運動前後に取り入れると効果アップ
7-4 鍼灸治療
- 体に細い鍼を刺して血行を良くする方法
- WHOや海外のガイドラインでも安全で薬の副作用が少ないと評価
- 当院「和からだみなおし処」では、
- 部活で腰を痛めた中高生に鍼+ストレッチ指導
- 2~3回で痛みが半分以下になる例も多数
8. 薬を使うときのポイント
薬の種類 | 使う期間 | 注意点 |
---|---|---|
解熱鎮痛薬(ロキソニンなど) | 1~2週間 | 胃の痛み、腎臓への負担 |
アセトアミノフェン | 比較的安全 | 効果が弱いと感じる人も |
筋弛緩薬 | 数日~1週間 | 眠気 |
うつ薬系(SNRIなど) | 慢性化した痛みに | 医師と相談しながら続ける |
大事:薬は最小量で最短期間。 飲む前にまず運動やストレッチを試そう。
9. 手術は本当に最後のカード
- しびれやまひが強く、日常生活ができない場合に検討
- でも手術後もリハビリが必須
- ガイドラインでも「多くは保存療法で良くなる」と強調
10. ふだんからできる予防 5か条
- 毎日20分ウォーキング:背骨をやわらかく
- 体幹トレーニング:プランク30秒×2セット
- イスと机の高さをチェック:目線は画面の上1/3に
- 水分補給:こまめにコップ1杯
- ストレス発散:深呼吸や趣味でリラックス
11. 和からだみなおし処の取り組み
ステップ | 内容 | 中学生向けポイント |
---|---|---|
1 初回カウンセリング | 生活習慣シート記入 | ゲーム時間や勉強姿勢もチェック |
2 姿勢と柔軟性テスト | 前屈や片足立ちなど | 運動部・文化部どちらでもOK |
3 鍼灸+ストレッチ | 痛みを下げて動きやすく | 鍼は髪の毛ほどの細さ |
4 ホームエクササイズ指導 | 動画+LINEでフォロー | 動画は短く見やすい |
5 月1回フォローアップ | 再評価で改善度を確認 | 大会前にもアドバイス |
12. よくあるQ&A
Q1:腰が痛いときはずっと寝ていた方がいい?
A1:2日以上ゴロゴロはNG。筋肉がかたまり、治りを遅くします。痛くない範囲で軽く動きましょう。
Q2:骨がズレたから痛いんでしょ?
A2:レントゲンでズレが見つかっても、痛みと関係ないケースは多いです。痛み=損傷ではないと知ることが大切。
Q3:鍼はこわくない?
A3:注射よりずっと細い鍼を浅く刺すので、ほとんど痛みを感じません。当院では中学生アスリートも受けています。
13. まとめ
- 腰痛は“体・心・生活”が絡み合う身近なトラブル
- レッドフラッグがなければ、まずは動く&学ぶが先
- 運動、ストレッチ、鍼灸など薬に頼りすぎない方法が推奨
- イスの高さやスマホ姿勢など小さな習慣改善が大きな差に
- 「痛みに負けない工夫」を知って、部活も勉強も全力で楽しもう!
もし腰や背中に不安があれば、いつでも「和からだみなおし処」へ相談してください。やさしく丁寧にサポートします!
※この記事は日本整形外科・腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019」およびWHO国際ガイドライン(2023)を、中学生向けにわかりやすく再編集したものです。
2019腰痛ガイドライン
https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00498.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true
2023Guideline for non-surgical management of chronic primary low back pain
https://www.who.int/publications/i/item/9789240081789
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